
AIツールは、単なる先端技術や業務効率化の手段ではなく、もはや教育、地域、企業、福祉、行政といった社会のさまざまな現場において、人の知的活動を支援し、社会課題の解決を後押しするための道具になっています。
近年の生成AIをはじめとするAIツールの普及で、情報収集、文書作成、分析、意思決定支援といった知的作業の在り方は大きく変化してきました。しかし、AIツール導入を目的にしてしまうと、その効果は、単なるブーム的な一過性に終わり、現場には定着しません。
AIツールの社会活用において重要なのは、「どの課題に、どのような形で用いることができるか」という視点が大切です。生活や企業の現場に着目した課題を起点にAIツールを活用し、人の判断や創造性と適切に役割分担することで、初めて持続的な価値が生まれると考えています。
AIツールは、人間に代わって学習や研究を代替する存在ではありません。人間の学習や研究において思考を深め、検討を広げるための「応援ツール」として活用されるべきものです。そのためには、AIツールの特性や限界、倫理・権利・セキュリティへの理解を前提に正しいAIリテラシーを高めることが大切です。
AIツールの社会活用は、技術を社会に当てはめることではなく、社会の課題に寄り添いながら技術を使いこなすことと理解し、その視点を共有しつつ、実践知として蓄積することがAIツールを社会で活用する基盤になると考えています。
主なAIツール分類
生成AIには、さまざまな特性を持つ生成AIが提供されており、それぞれの用途に応じた活用方法があります。
文章生成系
文章生成AIは、人間が書いたかのように自然で読みやすい文章を作り出す技術です。ブログ記事、小説、レポート、メール、説明文など、さまざまな用途の文章を自動で生成することができます。
このAIは、大量の文章データを学習/機械学習することで、文脈や文法、言葉のつながり方を理解しています。そのため、テーマや質問を与えるだけで、あたかも人間が考えて書いたような文章を短時間で作成することが可能です。
例えば、「犬の飼い方について教えて」と指示すると、飼育環境や食事、しつけのポイントなどを含んだ詳しい解説文を数秒で生成します。一方で、生成された内容には誤りや不正確な情報が含まれる可能性もあるため、最終的には人が内容を確認し、正確性を判断することが重要です。
情報検索系
情報検索AIは、インターネット上に存在する膨大な情報の中から、利用者が求める情報を効率よく探し出す技術です。大量のデータを瞬時に分析し、質問の意図に合った情報を提示します。
従来の検索エンジンが「キーワード一致」を重視していたのに対し、情報検索AIは質問文の意味や文脈を理解し、より適切で関連性の高い情報を選び出します。
例えば、「東京の穴場カフェ」と質問すると、単なる店舗名の一覧ではなく、それぞれのカフェの特徴や雰囲気、おすすめポイントなどを含めて提案することができます。調べ物の時間を短縮し、理解を深めるための補助として活用されています。
文字起こし系
文字起こしAIは、音声や動画データを解析し、それを文字テキストに変換する技術です。会議の議事録作成、講演やインタビューの記録、オンライン動画の字幕作成など、幅広い場面で利用されています。
近年では認識精度が大きく向上し、人間が聞き取るよりも正確に文字化できるケースも増えています。特に、専門用語、複数の話者が同時に話す場面、方言やアクセントの違いにも対応できるようになってきました。これにより、作業時間の削減や記録の正確性向上が期待されています。
画像生成系
画像生成AIは、文章による指示(プロンプト)をもとに画像を自動生成する技術です。「夕日に立つ孤独な男性」といった簡単な文章を入力するだけで、写真風やイラスト風など多様な表現の画像を作り出すことができます。
この技術は、イラストレーターやデザイナー、教育関係者などが、資料用の図やイメージ案を考える際のアイデア出しや下絵作成に活用されています。
ただし、AIは過去に学習した画像データをもとに新しい組み合わせを作っているため、完全に独創的な作品とは言えない場合があります。また、画像内の文字が読みにくかったり、現実とは異なる表現になることもあります。
音声・音楽生成系
音声・音楽生成AIは、人工的な声や楽曲を作り出す技術です。文章から自然な音声を生成したり、歌詞とメロディを組み合わせて歌声付きの楽曲を作成したりすることができます。また、特定の音楽ジャンルやアーティストのスタイルを参考にした楽曲を生成することも可能で、作曲家や音楽プロデューサーに新しい創作の手段を提供しています。
一方で、実在する人物の声に似せた音声を生成できるため、著作権や倫理面での配慮が必要とされています。適切なルールのもとでの利用が求められています。
動画生成系
動画生成AIは、テキストや画像などの情報から動画を自動的に作り出す最先端の技術です。教育用動画、商品紹介動画、簡単なアニメーションなどを、人の手をあまりかけずに制作することができます。
AIが映像の動きや構成、演出を考え、短時間でリアリティのある動画を生成するため、制作コストと時間を大幅に削減できます。特に、マーケティングや教育分野において活用が進んでいます。今後は、映画やエンターテインメント分野での本格的な利用も期待されています。
プログラム生成系
プログラム生成AIは、人が自然な言葉で指示を出すだけで、コンピュータプログラムのコードを自動生成する技術です。
例えば、「ユーザーログイン機能を作って」と指示すると、画面設計や基本的な処理を含むプログラムコードを生成します。専門的な知識が少ない人でも、ノーコードやローコードでシステム開発が可能になります。
業務現場では、定型的な作業や単純作業を自動化するシステムの開発が容易になり、生産性の向上につながっています。ただし、複雑で高度なシステムについては、依然として人間のプログラマーによる設計や確認が必要です。しかし、技術進化によって、いわゆる「匠の技」をAIツールが入念に学習しロボットなどにプログラミングすることで、精密な作業結果を再現する日も間近でもあります。
データ生成系
データ生成AIは、現実世界のデータをもとに、それに近い特徴を持つ人工データを作り出す技術です。医療、金融、研究分野などで、個人情報を保護しながらデータを活用する手段として注目されています。
例えば、個人を特定できない匿名の医療データや、金融リスク分析のためのシミュレーションデータを生成することが可能です。
この技術で、実データが不足している場合のテスト現場や研究現場では効果的なシミュレーションが実現でき、同時にプライバシー保護という課題の解決にも貢献しています。
生成AIを統合的に活用
生成AIを統合的に活用することは、分野の異なる複数の生成AIを組み合わせて、単一のAIでは対応が難しい複雑な課題を解決しようとする取り組みです。文章生成、画像生成、動画生成、データ分析など、それぞれの強みを持つAIを連携することで、より実践的で現実に近い成果を生み出すことが可能になります。
<例>
マーケティングキャンペーンのシミュレーション
文章生成AIを用いて広告コピーやキャッチフレーズを作成し、画像生成AIによってポスターやWeb広告用のビジュアルデザインを制作します。さらに、分析系AIやシミュレーションツールを活用することで、想定される市場の反応や顧客の行動を予測し、施策の効果を事前に検討することができます。
製品開発やプロトタイプ制作
生成AIを使って製品コンセプトやアイデアを整理し、3Dモデル生成や動画生成AIによって、完成品に近い形で視覚化することが可能です。これにより、実際に製造する前の段階で、デザインや使い勝手を検証することができます。
このような取り組みを通じて、単なるAIツールの操作にとどまらず、AIを実務にどう組み込み、課題解決に活用するかという実践的な視点をもつことができます。特に、起業や製品開発をテーマにしたビジネスシミュレーション(=デジタルツイン)に取り組むことで、実社会における応用力や課題発見力を強化することが期待されます。この考え方は製造業、医療分野、金融分野など、さまざまな産業に応用することが可能です。産業ごとの課題や業務特性に合わせた「分野特化型の生成AI」を構想することで、将来的なカスタム生成AIの構築や新たなビジネス創出について考えるきっかけにもなります。
AIツールラインナップ
2024/12現在の情報
| 生成分類 | 生成AI名称 | 特性 |
| 文章 | ChatGPT、Copilot、Claude、 Google AI Studio、Gemini、Felo AI | ユーザーとの対話を通じて支援や助言を行い、自然言語処理技術で文章生成、要約、翻訳を実施。 プロンプト生成や資料構成立案にも役立つ。 |
| 情報検索 | NotebookLM、Perplexity AI、 Genspark、Felo AI | 会話型でWeb検索を通じて関連情報を収集し、複数の情報源からデータを整理してユーザーに提供する。 |
| 文字起し | Gladia、Google Translate、 Jasper、Copy.ai、DeepL | 音声認識技術を使い、会話や講演などの音声データを自動的に正確なテキストに変換する。 |
| 画像 | Gamma、Canva、Mapify、Felo AI、 DALL・E、Google ImageFX、Napkin、 MidJourney、Stable Diffusion、 RunwayML、Synthesia、 | テキストや参考画像を基に、高品質な画像やデザイン、図解、アイコン、マインドマップを生成。 パワーポイントスライド、Webページデザインを生成し情報の思考整理や資料作成に役立つ。 |
| 音声・音楽 | Google MusicFX、CoeFont、SUNO、 Amazon Polly、AIVA、Amper Music、 Adobe Podcast Enhance | テキストからナレーション音声や音楽を生成し、音声変換、作曲、効果音生成、人物音声の修正・加工を行う。 |
| 動画 | Google VideoFX、Lumen5、 DeepMotion、RunwayML | テキストや画像を基に短編動画を迅速に生成し、テンプレートを活用した映像制作を行う。 |
| プログラム | Dify、Tableau、bolt.new、GitHub Copilot、NVIDIA Omniverse、 Tabnine、OpenAI Codex、Kite、Sourcery、UiPath AI | ユーザー指示に基づき、プログラミングコードを自動生成。ノーコードやワークフロー対応、リアルタイムにバグ修正、エラー解析、スクリプト生成を支援する。3Dシミュレーションおよび仮想空間構築も可能。 |
| データ アプリ構築 | Gretel.ai、Mostly AI、 | プライバシー保護データ生成、プライバシー保護された合成データ生成。 |
下線付きはNIICTEC-Lab.が試用したAIツールです
