
LPWA無線通信
近年、センサーやマイコンを使った個人開発が広がり、無線通信を活用した作品や研究テーマも身近になっています。しかし、無線通信は「難しそう」「コストが高そう」という印象を持たれがちです。
その中で注目されているのが、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる省電力・長距離通信の技術群です。特にLoRaは、個人でも扱いやすい無線方式として多くの開発者に選ばれています。
LPWAは、その名称が示す通り「低消費電力(Low Power)」と「広域通信(Wide Area)」を両立させた無線通信技術の総称です。
現代のIoT(モノのインターネット)インフラを支える重要な技術であり、従来のWi-FiやBluetoothでは届かない広範囲を、数年単位のバッテリー駆動でカバーできるのが最大の特徴です。 出典:総務省情報検索
LPWAとはどのような通信か
LPWAは、少ない電力で長距離通信を行うことを目的とした無線通信技術です。高速通信は得意ではありませんが、センサーデータのような小さな情報を、数百メートルから数キロメートル先まで送ることができます。
そのため、スマート農業、環境計測、防災、地域IoTなど、「常時大量通信は不要だが、長期間安定して動かしたい」用途に向いています。
LPWAの中でLoRaが持つ特徴
LPWAには、LoRaのほかにNB-IoTやLTE-Mなどがあります。これらと比べたとき、LoRaは構造が比較的シンプルで、通信の仕組みを理解しやすい点が特徴です。
通信キャリアに必ず依存する必要がなく、自分でゲートウェイを設置してネットワークを構築できる点も、LoRaならではです。
LoRaが個人利用に向いている理由
LoRaが個人開発に向いている最大の理由は、導入のしやすさにあります。市販のLoRaモジュールは比較的安価で、ArduinoやRaspberry Pi、ESP32などと簡単に接続できます。
また、消費電力が非常に低いため、電池駆動の実験や長期間のデータ取得に適しています。電源設計をシンプルにできる点は、試作や学習を進めるうえで大切なポイントです。
さらに、LoRaは通信距離が長く、屋外実験や地域規模のプロジェクトにも使いやすい特徴があります。自宅の庭、学校、地域施設など、身近なフィールドで実験を行いやすい点は、個人開発との相性が良い要素です。
LPWAの主な特徴とメリット
- 圧倒的な省電力性: 通信時以外の消費電力を極限まで抑える設計になっており、一般的な乾電池や小型バッテリーだけで数年〜10年以上稼働させることが可能です。
- 広大な通信距離: 通信環境によりますが、市街地で数百メートルから数キロメートル、見通しの良い場所では数十キロメートル以上の伝送が可能です。
- 低コスト: 通信モジュール自体が安価であり、通信プランも低容量向けに設定されているため、大量のデバイスを配置するプロジェクトに適しています。
- 少量のデータ伝送: 一方で、通信速度は非常に低速(kbps単位)です。画像や動画の送受信には向きませんが、温度・湿度・位置情報などの「数値データ」を送るには十分な性能を持っています。
主な活用シーン
LPWAは、以下のような「点在するデバイスから少量のデータを長期間集めたい」場面で真価を発揮します。
| 分野 | 具体的な活用例 |
| スマート農業 | 広大な田畑の土壌水分量や気温のモニタリング |
| インフラ監視 | 水道・ガスのスマートメーター検針、橋梁の歪み検知 |
| 物流・資産管理 | パレットやコンテナの広域位置トラッキング |
| 防災・環境 | 河川の水位監視、山間部の土砂崩れ検知 |
ネットワークを自分で設計できる自由度
LoRaは、LoRaWANという通信プロトコルと組み合わせることで、本格的なIoTネットワークを構築できます。
クラウドサービスを使うこともできますし、ローカルサーバーで完結する構成を選ぶことも可能です。
この自由度の高さは、「通信の仕組みを理解しながら作りたい」「自分の目的に合わせて設計したい」人にとって大きな価値があります。
学習・研究テーマとしてのLoRa
LoRaは単なる通信手段ではなく、電波、ネットワーク設計、省電力制御、セキュリティ、社会実装まで幅広いテーマと結びつきます。
個人開発から始めて、研究テーマや授業課題、地域連携プロジェクトへと発展させやすい点もLoRaの強みです。
小さな試作から社会課題への応用まで、段階的に広げられる点が大切です。
LoRaを選ぶという判断
LPWAの中でLoRaを選ぶことは、「手軽さ」と「拡張性」のバランスを取る選択だと言えます。通信キャリアに依存せず、自分のペースで試行錯誤できる環境は、個人開発や教育・研究との親和性が高いです。
まずは小さく作り、動かし、試す。その積み重ねが、無線通信を使った創造的な開発につながっていきます。
LPWAの2大分類:ライセンス系 vs ノンライセンス系
LPWAは、使用する電波の帯域(周波数)によって大きく2つのグループに分けられます。
ライセンス系(セルラーLPWA)
通信キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど)が、総務省から免許(ライセンス)を受けて運用する特定の周波数帯を利用する方式です。
- 主な規格: NB-IoT, LTE-M (eMTC)
- 特徴:
- 信頼性: 既存の携帯電話基地局網を利用するため、サービスエリア内であれば安定した通信が可能です。
- 運用: キャリアがネットワークを管理するため、自前で基地局を設置・維持する必要はありません(月額通信料が発生します)。
- 高品質: 免許が必要な専用帯域を使うため、他の無線機器からの干渉をほとんど受けません。
- 向いている用途: 都市部でのスマートメーター検針、物流トラッキングなど。
ノンライセンス系
特定の免許を持っていなくても、誰でも自由に利用できる周波数帯(サブギガ帯 / 920MHz帯など)を利用する方式です。
- 主な規格: LoRaWAN, Sigfox, ZETA, ELTRES, Wi-SUN
- 特徴:
- 自由度: 自分で基地局(ゲートウェイ)を設置し、独自のネットワーク(自営網)を構築できます。
- コスト: 通信料を無料、あるいは非常に低価格に抑えられます。
- エリア: キャリアの電波が届かない山間部や工場内、地下などでも、自分で設備を置くことで通信可能にできます。
- 干渉: 誰でも使える電波を使うため、同じ帯域を使う他の機器が増えると、混信しやすくなるリスクがあります。
- 向いている用途: スマート農業、山間部の防災監視、工場・倉庫内のセンサー管理など。
比較まとめ表
| 比較項目 | ライセンス系 (NB-IoT等) | ノンライセンス系 (LoRaWAN/Sigfox等) |
| 電波の免許 | 必要(キャリアが取得済み) | 不要(誰でも利用可能) |
| 基地局の設置 | キャリアにおまかせ | 自分で設置可能(自営網) |
| 主な提供エリア | 人口カバー率が高い場所 | 設置場所次第(どこでも構築可) |
| 通信コスト | 定額制の月額料金 | 低価格または無料(設備費は必要) |
| 干渉への強さ | 非常に強い(混信が少ない) | 混信のリスクあり |
どちらを選ぶべきか?
- 「とにかく手軽に、安定したキャリアの網を使いたい」なら、ライセンス系(NB-IoT等)が適しています。
- 「電波の届かない場所で使いたい」「通信料を最小限に抑えたい」「自前でネットワークを構築したい」なら、ノンライセンス系(LoRaWAN等)が有利です。
総務省の資料などでも、日本のIoT化を加速させるために、これら2つの方式が互いに補完し合いながら活用されることが推奨されています。具体的なプロジェクトの場所や用途をイメージされている場合は、それに合わせた規格の選定が重要になります。


