
日常の「困りごと」を社会につながる研究へ
研究テーマというと、専門的な技術や難しい社会課題を扱うものだと思われがちですが、実際には、私たちの日常生活の中にこそ、研究の種は数多く存在します。
「生活が少し不便だと感じること」「不安や負担を感じる場面」「「もっとこうなればいいのに」と思う瞬間」
これらはすべて、社会課題の入り口です。生活・暮らしの中で実際に存在する具体的なニーズを探り、それらをどのように研究テーマへ発展させるかを考えましょう。
生活現場で顕在化している具体的ニーズ
1. 高齢化社会における「見守り」と「自立支援」のニーズ
多くの地域で、高齢者の一人暮らしが増えています。具体的なニーズとして、「離れて暮らす家族が日常の様子を把握したい」「できるだけ介護に頼らず生活したい」「異変があった時だけ通知してほしい」といった声があります。
👉 研究テーマ例
- センサーを用いた生活リズム可視化システム
- プライバシーに配慮した見守り設計モデル
2. 子育て・共働き世帯の「時間不足」ニーズ
共働き世帯では、時間の不足が大きな課題です。具体的には、「家事・育児・仕事の両立が難しい」「情報管理(連絡、予定、書類)が煩雑」「家族間の情報共有がうまくいかない」といった問題があります。
👉 研究テーマ例
- 家庭内タスク可視化システム
- 生活行動データを活用した負担軽減モデル
3. 地域社会における「つながりの希薄化」ニーズ
地域では、「近所付き合いが減っている」「地域活動の担い手が不足している」「情報が届かない人がいる」といった課題が指摘されています。
👉 研究テーマ例
- 地域情報共有プラットフォーム設計
- 高齢者や子どもも使いやすいUI研究
4. 防災・安全に関する「分かりにくさ」のニーズ
防災情報は整備されていても、「どこに逃げればよいか分からない」「情報が多すぎて判断できない」「実際の行動につながらない」という課題があります。
👉 研究テーマ例
- 行動につながる防災情報提示方法
- センサーと通知を組み合わせた防災支援モデル
5. 日常生活における「デジタル疲れ」へのニーズ
デジタル化が進む一方で、「操作が難しい」「使い方が分からない」「高齢者や子どもには負担が大きい」という声も増えています。
👉 研究テーマ例
- 年齢差を考慮したインターフェース設計
- デジタル弱者を生まない仕組みの研究
生活ニーズを研究にする際の注意点
生活ニーズは身近である分、個人的な感想で終わってしまう危険があります。研究テーマにするためには、他の人にも共通する課題か、社会的な背景があるか、技術で改善できる構造かを整理する必要があります。
また、生活分野では使いやすさ・安全性・倫理への配慮が特に重要です。
背景となる社会動向
- 高齢化社会と地域包括ケア
- Society5.0 における人中心設計
- SDGs(健康、住み続けられるまちづくり)
- ユーザー中心の設計の考え方
生活ニーズから研究テーマを設計する手順
生活ニーズを研究に変える基本ステップです。
- 日常生活で困っている場面を観察する
- 困りごとを言葉にする
- 誰に共通する課題かを整理する
- ICTで改善できる部分を考える
- 小規模な試作・実証を行う
暮らしに関わる研究は
研究は、遠い世界の話ではありません。自分や身近な人の暮らしを見つめ直すことから始まります。生活・暮らしのニーズを起点にした研究は、社会にやさしく、長く使われる成果につながります。その一歩が、研究を「自分ごと」にする大切な出発点です。


